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二人の主人公のはざまで―ハリポタの読者の「役割」の変化について

今日お話ししたいのは『ハリー・ポッター』シリーズにおける読者の役割(ロール)の変化についてです。

2007年に『ハリー・ポッターと死の秘宝』が発売されてから、なんと8年が経とうとしています。あのとき生まれた子どもたちはいまや小学二年生。リアタイ勢だった私にはまったく実感が湧かないのですが、「原作が完結してからハマった」ファンもたくさんいるんですよね。

原作完結から2015年までの間に、テーマパーク化や「ポッターモア」の公開、『幻の生物とその生息地』の映画化決定など、実にさまざまなメディアミックスが行われてきました。

この機会に、完結後にハリポタが辿ってきたメディアミックス展開を、ちょっとおさらいしてみましょう。そして、今までの主人公の「ハリー」と、次回作からの主人公の「ニュート」の性質の違いについてみていきたいと思います。

「ハリーのとなり」から「きみの物語」へ

ウェブサイト「ポッターモア」

原作者のJ.K.ローリング全面監修の、「ハリー・ポッターシリーズ」の公式サイト。魔法界の新情報は、基本的にここかローリング氏のツイッターで得ることになります。

β版は2011年にリリースされ、正式なサービス開始は2012年4月です。

会員登録をすることで、組分けの儀式や杖選び、殺伐とした決闘や魔法薬作りが楽しめます。また、数ヶ月毎のタームで寮対抗杯も開催されています。自宅のパソコンの前にいながらにして、ホグワーツの生徒になりきれるサービスです。

最大の見どころは「ハリポタ大事典」とでもいうべき情報量で、ここでしか見られない記事も多数存在します。マクゴナガル先生やルーピン先生の波乱万丈の人生はファンならずとも必見。

組分けされた(アカウントを取得した)生徒は、世界で1000万人以上にのぼります(2015年現在)。

PS3「Wonderbook」シリーズ

ハリポタのゲーム版といいますと『賢者の石』~『死の秘宝』までのハリーをプレイヤーとした作品を想像される方も多いかと思いますが、実は2012年以降新しいシリーズがPS3で発表されています。

 別売のモーションコントローラとカメラ、そして「ワンダーブック」と呼ばれる同梱のコントローラを使うことで、「杖と教科書を持った魔法使い」として、テレビ画面の中に入り込むことができます。プレイヤーはハリーではなく「魔法使いになった私たち自身」なのです。

 


Wonderbook: Book of Potions - Game Play - YouTube

筆者はまだ両方とも未プレイ。早くやりたい!

テーマパーク 

2010年のユニバーサル・オーランド・リゾートを皮切りに、各地での建設が発表され、2014年にはついにUSJでもオープンしました。主力のアトラクションは連日大行列で、ハリポタのコンテンツとしての強さを裏付ける結果になっています。また、オーランドでは新エリア「ダイアゴン横丁」もオープンしています。

主人公はもちろん、ひとりひとりのゲスト。マダム・マルキンで買ったローブを着たり、「三本の箒」でご飯を食べたり、オリバンダーで選ばれた杖を振ってみたり……読書体験をはるかに飛び出した「360度魔法界」という空間が広がっています。

「伴走者」のハリーと「案内役」のニュート

ハリー・ポッター』シリーズの児童書としての魅力の一つは、「同じ視点にいるハリーとともに、マグルの世界を飛び出して、はじめて魔法界を知っていく物語」である点でした。そして原作が終了してからの展開を見ると、各作品での「主人公」が、少しずつわたしたち読者へとシフトしていることがわかります。しかも、オンライン空間→ゲーム→テーマパークと、ひとつずつ段階を踏む形で。

原作者は「次はきみたちが魔法界で物語を紡ぎ、演じる番なんだよ」と背中を押してくれているのかもしれませんね。

 

ちなみに次回作の映画『幻の生物とその生息地』は、ホグワーツ生徒が持つ教科書の映画化という、ちょっと変わった設定になっています。主役のニュート・スキャマンダーは魔法界の役人ですが、世界各地を飛び回って幻獣百科を作り上げた人物で、「魔法界では誰もが知る有名人」という設定です。

この時点で、ハリーとまったく同じように感情移入するのは、ちょっと難しそうにみえます。ですが、これはおそらく原作者の計算と、あらたな試みによるものではないでしょうか。

魔法界を旅するハリーを伴走者と位置づけるなら、ニュートという人物は、さらに広い世界を見せてくれる案内役といえるでしょう。物語の中心はいまや「魔法界」そのものであり、主人公は私たちなのです。

もともと世界観や道具にこだわらない、複雑な人間劇を得意とするJ.K.ローリングの脚本なので、おそらく今までと同様魅力的な映画に仕上がるのだろうと思います。

しかし、「伴走者」ではなく「案内役」に導かれる次回作は、今までの『ハリー・ポッター』シリーズとは、ちょっと違った楽しみ方が要求されることになるかもしれませんね。